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お借りするということ

田舎暮らしをしている人たちは農地をどうしているのだろう?とお考えになる方も多いでしょう。
古民家を購入される場合は農地や山林が付随することが多々ありますが、実際には土地建物の購入における登記と農地の登記は別物と考えたほうがいいかもしれません。

 

農業を経験されたことのない方が農地を所有することの障害のひとつに地域の世話人に承認をいただき、農業委員会に推薦をいただかないといけないのです。

 

耕作する意思を問われても初めからイメージできる人なんて多くいるわけがありませんね。初めての田舎暮らしで土地建物と農地を一緒に取得される方はどのようにして取得しておられるのでしょうね。

 

私たちの場合は、11年間は古民家をお借りして月々の家賃をお支払いして暮らしていました。

田んぼも畑もそれぞれ所有者の違う方に、地域の方にご紹介いただいて直接お願いに伺い、とくに借地料もなく使わせていただきました。

 

はじめは田んぼ2枚(3反ほど)に畑1枚でしたが、少しずつ作りたい面積が広がり、田んぼは3枚、4枚と増え、畑も蕎麦に大豆にと3か所になり、トータルで7反までになりました。

 

蕎麦屋を開店するまでにここまでの耕作面積になっていましたので、さあいざ開店すると徐々に農作業の時間が作りにくくなり、7反分の世話ができなくなってしまっていました。

 

身の丈から外れていたのですね。

 

農地も自宅もそうですが、自己名義で所有するのと、お借りするのでは心づもりがちょっと違います。

 

お借りしている間はそれほど何も気にしていなかったのですが、これでもうお返しします!と期限が迫るとどのような状態でお返しするかという気持ちが大きくなってきます。

 

借家は「お借りした時よりもきれいにして!」

では農地は。。。

お借りした時の状態をよく覚えてませんでしたので比べられないのですが、ここらへんでも、他の農村部でも同じだと思いますが、草を刈って、トラクターや耕うん機で起した状態にしてお返しするのがルールなのでしょう。

 

今日は年末でお返しする1枚の田んぼ(途中から畑として利用)をトラクターで起こすところまで作業していました。

最初は稲を、数年目からしばらくは味噌用の大豆を育てていました。獣害がひどく、鹿にイノシシにと毎年のように収穫期に荒らされた農地です。ここ2年間はなんにも植えないまま保全管理だけしていました。年に2回程度全面草刈りをしていた程度です。

 

手入れが行き届いている農地と寄り付かなくなった農地では荒れ方が違いますね。

最後にトラクターで起すまでに時間がかかってしまいました。

 

良い状態を保つためにも、何かを植えて世話をすることで人の手が加わり、農地が生きてくるのだなあと当たり前のようなことを感じました。

 

様々なチャレンジができた場所です。感謝の気持ちで作業できました。

 

ここは車も人も往来のないとても静かな場所。

 

作業しながらふと思ったことは、借りているものといえば、自分の命もそうだなあということ。

いつかはお返ししなければならないわけです。

 

最後の最後にこの命をお返しするときに、整った健やかな状態であるか、はたまた荒れに荒れた病に侵された状態でお返しするのか。

 

どんな風に向き合って関わることがより良い健康に結びつくのかを考えさせられました。